深い落胆の声
深い落胆の声
「ねえ、恵介さん……」
恵介の耳に熱い吐息を吹きかけながら、侑香は囁いた。
侑香を抱く恵介の腕に力が入る。
侑香はしなやかな躯を反らせ、片肘を支柱に身を起こすと、斜め上方から恵介の顔を見下ろす姿勢を取った。
室内に差し込む外からの淡い光に、熱っぽく濡れた侑香の瞳が輝いている。
「私のこと、ずっと大切にしてくれる?」
恵介は侑香の言葉をしっかりと受け止めた。
掛け布団の中から音もなく腕が伸びてきて、侑香の頭の後ろに手が添えられたかと思うと、ぐいと引き寄せられる。
二、三度軽くかすめるように唇を触れ合わせた後、舌を絡ませて情熱的に吸い合った。
甘い息苦しさを覚えた侑香がやや力を込めて顔を引き離すと、ジュル、チュバッと大きな音がして、唾液の糸が二人を繋いだ。
侑香が舌先で恵介の唇の周囲をツンツンとつつくと、恵介も同じようにお返しをする。
侑香の主導で、子どものような愛の交歓がしばらく続いた。
いつのまにか体の上下が入れ替わり、侑香は恵介に耳朶を舐められながら、性感を昂らせている。
(そう、そうよ……もっとして、気持ちよくして。
ここも、して)
目を閉じ、恵介の愛撫を受けながら、侑香は男の手を探り当て、手首を掴んで胸に導いた。
最初はとまどったように所在なげだったが、侑香が軽く鼻を鳴らすと、自信を得たかのように力を入れて揉み上げてくる。
ようやく躯の芯に火がついて、柔肌の下で熱い血潮がざわつきだした。
(もっと、強く、ねえ、お願い……)
侑香は両手を恵介の体のあちこちに動かして、膚を強くさすり、時には肉を掴み締めて、激励した。
そんなことが何度か繰り返された後、
「ああ……ダメだ」
と深い落胆の声がため息混じりに聞こえた。
「どうしたの?」
無邪気な侑香の声が、恵介をさらに傷つけたようだ。
侑香は、太腿の内側に柔らかい肉片がピタピタと当たるのを感じた。
その先端が、心なしか濡れている。
猛っているのは心だけで、男根は萎えたままであった。
「ごめん……」
恵介は侑香から身を離し、ゴロンと仰向けになった。
前腕で目を隠している。
「どうしたの?」
心配になった侑香は、半身を起こして恵介の様子をうかがった。