恥丘を覆う黒い海草
恥丘を覆う黒い海草
「肝心なときに……役に立たなくて……」
恵介の声は、今にも消え入りそうである。
侑香はクスリと笑った。
「そんなこと、何でもない。
くっついて寝られれば、私それで幸せ」
そう言って身を寄せると、侑香は巧みに恵介の腕を枕にした。
温まってきた躯を押しつけるようにして、しばらくもぞもぞしていたが、やがてすやすやと寝息を立て始める。
かえって醒めてしまった恵介は、時折股間に手を伸ばしたが、その都度ため息を漏らした。
(あら、まだそんなに時間がたってないのかしら)
夢うつつの状態で、侑香はそう思った。
恵介が萎びたムスコをインサートしようとしている。
(無理よ、焦らなくていいの。
そんなこと、気にしていない。
いいのよ)
でも、両足が高々と持ち上げられている感覚には、妙に現実感があった。
そして、ツン、ツンとヴィーナスの丘あたりがノックされる。
(さっきより、少しは固いけど、まだ無理ね)
顔の向きを変えると、柔らかな光がまぶたを通して差し込んでくる。
眠ったまま、侑香は顔をしかめた。
(何だ、もう朝か)
そのとき、両足が静かに下ろされていく。
完全に布団の上に横たわった状態になったところで、侑香はうーんと大きく伸びをした。
目が覚めた。
(そういえば、露天風呂に入ってないな……)
半身を起こして、侑香は
「ねえ、いっしょに朝風呂しない?」
と恵介に呼びかける。
無邪気な声だった。
しかし、恵介は口を固く閉ざしたまま、侑香の浴衣の襟元からのぞく胸の隆起の始まりを見つめている。
深刻な表情で。
侑香はあわてることなく、ゆるんだ胸元や、はだけた太腿を覆って立ち上がった。
身に付けていたパンティは、布団の間にでも紛れ込んだのだろうか。
しっとり湿った陰唇がスーッとする。
大きなしぶきが上がり、波紋が広がる。
時ならぬ水音に驚いた小鳥がパタパタと飛び去る羽音がし、それに侑香の快活な笑い声が重なった。
(ああ、いい気持ち……)
仰向けになった侑香は、風呂の縁に両肘を乗せ、両足をそろえて躯を浮かせた。
頭を後ろに反らせ、目を閉じる。
湯の表面から椀を伏せたような形いい乳房が顔を出し、恥丘を覆う黒い海草がゆらゆらと揺れた。
(出てこないつもりなのかしら)